談話・・・心臓・冠動脈バイパス手術    

心臓は休むことなく働き続けており、1日に約10万回、1年で4,000万回の「拡張」と「収縮」を繰り返しています。送り出される血液は1分間に約5リットル、1日で7,000リットルにもなります。
現在、日本人の死因の第2位を心臓病が占めており、その多くが虚血性心疾患という名で総称される狭心症心筋梗塞です。虚血性心疾患の恐ろしい点は、自覚症状なく ある日突然心臓発作に襲われて死に至る事があるということです。
人間が生きていく上で非常に大切な臓器の心臓に、日々の不適切な食事や生活習慣が大きな悪影響を及ぼしています。高血圧や高脂血症,糖尿病,肥満などが関わっている虚血性心疾患は生活習慣病の最終段階といっても過言ではありません。
自分には病気は関係ないと思っていても、寄る年波には勝てずにあちこちにガタがきています。
市の定期健診(2011年3月)で前立腺異常が見つかりました。
(腫瘍マーカー(PSA)=5.8)
総合病院での再検査(PSA
(=8.0),エコー検査やMRI検査)で「前立腺肥大」、「癌の疑いもグレーゾン」との診断でした。

「癌」の疑いのため、再々検査で 前立腺生険や心臓検査,血液検査を行いました。
前立腺生険
(注1)では 13ヶ所からサンプルを採取しましたが、「癌」は見つかりませんでした。
しかし、心臓検査では 思ってもいなかった心臓異常が見つかり、6月13日に心臓のカテーテル検査
(注2)冠動脈造影(注3)を行いました。
造影結果、心臓・冠動脈の4ヶ所が狭くなっていました。狭くなった部分が詰まると心筋梗塞が起こります。

ドクターから、冠動脈バイパス手術(狭くなった冠動脈に迂回路(バイパス)血管をつなげる外科手術)を薦めると云われました。
検査を受けた総合病院には心臓外科がないので、冠動脈バイパス手術のできる病院を紹介されました。
紹介された病院のドクターからも、早く対処をした方が良いのではとのことでした。
心臓異常と云われても、全く自覚症状がないので本当に病気なのかと戸惑ってしまいました。

心臓手術をするかどうかは 自分自身次第、手術しないのもリスクがあり、手術するのもリスクがあります。
ドクターとの話し合いの結果、現代医学とドクターの腕を信じて 冠動脈バイパス手術を7月28日に行うことに決まりました。
(狭くなっている部分を広げるには 「ステント」を入れるという方法がありますが、私の狭くなっている部分の1ヶ所は長いので「ステント」は無理とのことでした。)

手術は7月28日午前9時から開始、全身麻酔でオフポンプCABG、胸の中央にメスを入れ そして 胸骨を縦に切断、心膜を切開して心臓に到達、バイパスに使う血管は 肋骨の内側にある胸動脈と右足内側にある静脈の血管、手術時間は約5時間、麻酔から覚めたのは翌日午前3時 ICU室でした。

術後、不整脈発生や肺に穴があく「気胸」の合併症になりましたが、意外と体力があったようで 予定より早く8月9日に退院できました。
退院後は 家でリハビリをし 1ヶ月毎の定期健診、4ヶ月後の11月末に従前の生活に戻ることが出来ました。

冠動脈の狭窄発覚 = 
入院 = 
冠動脈バイパス手術 = 
退院 = 
2011年6月13日
7月22日
7月28日
8月9日
(注1) 前立腺生検
前立腺に癌がないかどうかを前立腺組織を採取(10〜15ヶ所)して検査するものです。
検査には通常1泊2日あるいは2泊3日の入院を必要とします。
前立腺は精液の一部を作る臓器で、前立腺癌は 欧米においては男性で2番目に多い癌です。また、男性の6人に1人は生涯の内に癌になるであろうという予測もされています。日本でもその数は急速に増加する傾向にあります。
一般に進行の遅い癌とされ、早期に生命に危険が及ぶ可能性は高くないかもしれませんが、前立腺癌による死亡数は年々増加しています。 直腸診、腫瘍マーカー(PSA)、超音波などで前立腺癌が疑わしい時に生検を行います。
(注2) 心臓カテーテル検査
心臓に特殊な細いプラッチックの管(カテーテル)を挿入し、心臓内の圧や血液の酸素濃度を測定・分析したり、造影剤を注入してX線撮影し、心臓の血液状態や形、心室・心房と弁の動きを調べたり、さらには心臓の筋肉(心筋)を採取して病理学的に検査する心筋生検などを行なう検査です。
(注3) 冠動脈造影
冠動脈造影とは、心臓の冠動脈の血管の走行と狭窄度をみるために、造影剤を流して撮影する検査です。
造影剤は、腕や足の血管から入れたカテーテルにより注入され、冠動脈をいろんな角度から撮影します。
冠動脈造影をすれば、ほぼすべての冠動脈の状態が把握でき、どのくらい血管が狭窄しているかがはっきり分かる検査です。
  (右画像 = 造影剤注入による冠動脈造影)
病状および手術説明の時のメモ書き

術後1週間後のCTの合成修正画像


1. 狭心症、心筋梗塞について


「狭心症」とか「心筋梗塞」とかの病名を耳にしたことがある方が多いのではと思います。
拡張と収縮を繰り返し 血液を体に送り出すしているのは心臓ですが、それを担っているのが心臓の壁を構成している筋肉(心筋)なのです。
全身どこの筋肉もそうですが、心筋も活動するためには酸素が必要です。酸素は血液によって運ばれます。酸素を心筋に運ぶ血管が冠動脈で、冠動脈には3本の太い枝があり 心臓の周りを王冠のようにめぐっています。

狭心症とは、主に動脈硬化が原因で冠動脈が狭くなり心筋が酸素不足になり、胸が苦しくなったり痛くなったりする病気のことです。
さらに冠動脈が完全に詰まって、その先の心筋が壊死を起こすのが心筋梗塞です。
狭心症がひどくなり、じっとしていても薬を飲んでも痛みが治まらない状態を不安定狭心症と分類したり、今にも冠動脈が詰まりそうな状態を切迫心筋梗塞と呼んだりします。
これらの病気、つまり 心筋への血液供給が足りないことを原因とする病気をまとめて虚血性心疾患と呼びます。

心筋梗塞の原因としては、下記の3つが主にあげられます。
    ◎ 血栓による閉塞
    ◎ 冠動脈のスパスム(痙攣)による閉塞
    ◎ その他(血管の解離、動脈瘤、細菌性心内膜炎など)
これらほとんどは、血栓による閉塞が原因によるものです。
では血栓はどのようにできるのかというと、長い時間によって 冠動脈の血管の内膜にプラークといわれる脂肪や血液物質のまざったものが付着し、そのプラークが繊維化して大きくなり、血流と停滞して血栓を形成します。

大きくなった血栓が更に大きくなり血管を閉塞させるか、あるいは 血栓がはがれて 血流にのってその先の血管につまって閉塞することにより 閉塞した先の血管に血液が流れなくなります。すなはち 閉塞した血管に支配されている先の部分の細胞に酸素と栄養がいかなくなり 細胞は死んでしまいます(心筋の壊死)。
ただ、心筋梗塞が起こっても すぐに閉塞した血管を開通させて 血流を再開させれば細胞は死にませんが、血流が途絶えて20分以上経つと壊死が始まります。

治療には 薬物療法カテーテル療法冠動脈バイパス手術の3つがあり、検査の結果冠動脈がどれだけ悪いかと年齢,体力,他の病気の有無などから総合的に判断され治療方法が選択されます。
薬物療法は内服薬による治療です。カテーテル療法とは、局所麻酔で手や足の血管から心臓の冠動脈まで管を入れて、狭くなっている部分を風船のようなもので膨らませたり、金属の筒で広げたりする治療です。冠動脈バイパス手術冠動脈にバイパス血管を繋ぐ手術です。

2. カテーテル治療

主に足の付け根の血管から細い管を冠動脈まで入れて、狭い部分を広げたり削ったりする治療法で、循環器内科医の専門分野です。
カテーテル・インターベンションと呼ばれて、現在はPCI
という英語の略が一般化しています。
1979年にスイスの医師が報告したのが最初で、この時は先端に風船(Balloon)のついたカテーテルを冠動脈の狭くなっている部分に通し、風船で膨らませます。
その後、カテーテルを経由し さまざまな方法で冠動脈の治療をする技術や器具が開発され、狭くなっている部分を広げた後にステントという網目構造をした血管の鋳型を入れる方法が主流になっています。他にも、先端にドリル状の構造を持つカテーテルで、狭窄部分を削ってしまう方法もあります。
これらカテーテル治療にも問題点がいくつかあります。
ひとつは再狭窄といって、一度広がった部分が数ヶ月後に再び狭くなってしまう現象です。これに関しては再狭窄を防ぐ作用がある薬剤がじわじわとしみ出す仕組みを持つ新たなステントが広く使われ始め、冠動脈の分野における心臓外科医の出番は次第に少なくなってきたのが全国的な風潮です。

   (右図 = カテーテルでステントを挿入した図)

3. バイパス手術

狭くなったり閉塞している冠動脈の先に別の血管(グラフト血管)を繋げ、血液がその道(バイパス)を通り、これによって血流の少ない部位により多くの血液を流してあげるのがこの手術の原理です。
それにより心筋の酸素不足による狭心症が改善され、また狭い部分が閉塞しても心筋梗塞になりません。手術の方法には、大きく分けて2つの方法があります。1つは人工心肺装置という器械を使用し心臓を止めて手術を行う方法です。もう1つは、人工心肺装置を使用せず、心臓が動いたまま行う方法です。後者の事をoff-pump CABG(オフポンプ CABG 
(注4))といいます。
前者(人工心肺法)はオーソドックスな方法で、日本での歴史は30年以上あります。後者は1990年代後半から急速に普及した方法です。
どちらの方法にもメリットとリスクがあるため、患者の病態や年齢,健康状態など、多くの要素を総合的に判断して決定されます。
このバイパスに使うグラフト血管は、肋骨の内側にある胸動脈、手の肘から手首にかけてある橈骨動脈、足の内側にある大伏在静脈などがあります。これらの血管をさまざまに組み合わせて手術を行うのです。

  (注4) CABG = Coronary Arterial Bypass Grafting (冠動脈バイパス手術)

脳卒中や心臓病などの確率を簡単予測、皆さん 予測如何ですか!!
「10年後、脳卒中や心臓病などになる確率はどれくらい? ・・・ そんな予測式をゲンキープ大阪(大阪府立健康科学センター)が開発し、ウェブで簡単予測」という記事が朝日新聞にのっていました。(2012年1月7日)
健康状態を入力すると簡単に計算でき、生活習慣をどう改めれば どれぐらい効果があるのかも教えてくれます。
URL = http://www.kenkoukagaku.net/yosoku/


inserted by FC2 system